（昭和43年2月1日、九十九里ご本営法座における録音筆記…筆記責任者…菅原 実）
ああ皆様今日は、どうも御苦労様です。ええ四十三年もいよいよ今日あたりから新年になったように思います。旧正月は一月三十日だったかな、そうすると今日は正月三ヶ日の内ですね。
私はやはり、東洋は太陰暦の旧暦の方が、我々東洋人の生活にピタリとしているように思う。太陽暦は陽性の暦だから西欧の生活と風習に合っているようですね。又それぞれの国土と環境に自然にかなったものだと思う。ですから、私は、皆さんのお守りを新の正月には出さないの。何時も旧に出すのはそのためなのです。
この宇宙には一つの倫理がありますからね。宇宙には春夏秋冬その他の命がある。また命のあるものには倫理がある。倫理とは、命あるものとしての行うべく定められた道ですね。宇宙に倫理があるということは、宇宙に魂があるからなのです。宇宙そのものが生命である。宇宙そのものから生命を取ってしまえば、単なる物体でしかない。例えば、あなた達御婦人は母体に生命があるから、胎内に宿る精虫の生命が育って行くの。生命とは神なの。母に命なる神がなければ、その母の中なる子供に神は宿らない。
これは、今日、これから非常に大事な話をする予備なのだから心に留めてほしい。
昭和43年とはどういう年かと言うと、先ず因縁という言葉だが、その意味は、時代の機根を謂うんだが、今年は一段とひどい事が起こり重なると申しましたね。その通りだんだんひどいでしょう。
* 因縁とは時代の機根(はたらき)をいう…当たっていた先生の予見 *
火災や自動車事故で怪我をしたり死ぬ人も去年にくらぺて四割以上も多い。それから財政的にも随分変動がくるようだ。例えばアメリカは「金本位制」というものをやめるかも知れない。でないと弗（ドル）の防衛ができないから。アメリカは今のところ世界における流通貨幣の「胴元」。胴元とはつまり、大親分次郎長さんみたいなもんだね。
アメリカは貨幣における胴元だから、その胴元の地位が持たない状態に来たわけだ。アメリカの前はイギリスだね。私は若い時に三井物産に勤めていたがね、その時はドルが主ではなかった。つまり世界の通貨ではなかった。その時は七つの海に没することがない大英帝国のポンドだったんだよ。それ程の英国がね、今日に至って遂にポンドの平価を下げたでしょう。つまり大親分の座から下りたわけだな。そればかりではなく、極東に駐留した軍隊を皆引上げてしまうでしょう。それやこれやで白人の勢力で保ってきた世界経済に大きな穴があくでしょう。その影響がアメリカヘどんどん行く。アメリカが十年前あたりまでは、金が二百四十ドルほどあったものが、今は百五ドル位な状態なのだよ。又ベトナム戦争に使う戦費だけでも東京都の予算の十倍位煙になって消えてしまう。それにアメリカはドイツだこいつに駐留するし、又日本を含めた極東に駐留する。その外東南アジア諸国に軍事援助、物資援助があるでしょう。だからアメリカのお台所にだんだん火がつき始めてくる。
今迄胴元になって威張っていたものがね、ここへ来てヤンキー威張り過ぎるというので、フランス、ドイツ、その他の国は世話になりながらも、苦しい状態を横目で見ていたわけでしょう。そこをつけ込んで、フランスのドゴールあたりがどんどん、アメリカの金を調子に乗って買い込むものだから、アメリカの国内に金が無くなってしまうでしょう。そこでアメリカはこりゃいかんと思うとますます追打ちをかけて来るんだ。そうなるとアメリカは金本位の地位を何とか維持して行かねばならないから、日本の援助を求める訳だね。何故ならば、今日こうして非常に国民が平隠無事、しかも贅沢に暮らしているということは、アメリカ人の税金で、物的、経済的な恩恵によるものであるという事を、アメリカ自身もそう考えているからね。そして又、現在東南アジアで起きている問題は、東南アジアの一環である日本にも当然その影響が来るわけでしょう。その来るべき影響が直接来ないという事は、アメリカが日本に代わって自分の費用を出して守っているのだから、日本に援助を強要するのは当然の事となりますね。
* おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢の如し *
社会党あたりは、そんな要求は断われ、絶対に協力しちゃならん、と云っているが、しかし、日本の現状からいってどうしても協力しなくてはならない。協力しなければね、今度アメリカとの間がうまく行かなくなるでしょう。まず輸出が止まる。そうすると日本は工業の国だから原料が入らなくなる。
* 因縁によって生じ、因縁によって滅す…因縁の次第を知るべし *
協力しなければね、今度アメリカとの間がうまく行かなくなるでしょう。まず輸出が止まる。そうすると日本は工業の国だから原料が入らなくなる。のみならず日本の輸出の半分はアメリカだから、繊維製品、或は自動車工業、船舶工業その他色々の生産分野の製品に高い税金を掛けられる。そうすると外国との輸出の競争に負けてしまうことになるから困る。だから社会党はその時にどうするという事は云えない。そこに社会党の弱さ、つまり現実性がないと云われる処がここにあるのですね。社会党とすれば、その時は中国乃至ソビエトと一緒に行くと云うでしょう。もし一緒に行った場合は、日本人の生活水準はぐんと下って苦しくなるでしょう。今の日本国民の生活の状態から言って社会党の方針を受け入れることは絶対にないね。
春野さんの旦那様は、千秦日報の経済部長さんだから経済の事は多少知っているだろう。青年部の諸君は特に日本と世界の情勢を研究しなければいけないね。仏法で謂う処の「因縁の次第」つまり、三秘五綱の「機」とはこういうことを云うんだから。（三秘とは本門の題目、本門の本尊、本門の戒壇である。五綱とは教と、機と、時と、国と、序との五つである。）
このように世界の動きがひしひしと私達の身に感じるでしょう。韓国も今ベトナムに四萬も五萬も軍隊を出しているでしょう。そうするとそれ以上の兵を出させないように北鮮の方で牽制してくるでしょう。その一連の事件がフエブロ事件だね。まあ日本海でアメリカの軍艦が他国によって拿捕されたということは初めての事ですね。北鮮のような吹けば飛ぶような国からやられるのだから大変な事件なんだ。そうするとアメリカと北鮮との間に、大国のソ連が仲裁に立つようになる。それをソ連が強く断れば、今度は米ソ戦になり兼ねない。
* 信仰は争いを滅す *
そうするとアメリカよりソ連の方が破壊される公算が大きい。どうしてかというと、それは軍事的・経済的・生活的に破壊されるということではなくて、ソ連の政治形態が破壊される。アメリカの資本主義は三百年の伝統の中で育っているが、ソ連の共産主義は五十年位だから、まだ確固とした地盤ができていない。だからその政権がひっくり返るおそれがあるわけだ。ソ連としては、折角これまでしたのが皆ぶちこわされてしまう。だからどうしてもソ連の方がアメリカに押しまくられてしまう。ソ連としてはこの不利を承知で立って行かなきゃならない。だからベトナムにしても、北鮮にしてもソ連は表面に立つ事はしないで裏からその尻をたたいている。
アメリカでは、十一月の選挙にジョンソン大統領が立ってその選挙に勝たなければならないでしょう。そうするにはベトナムにおいて、アメリカの国威を発揚して見せなければならない。従って戦争が派手になって来て、所請エスカレーション的戦争となって往復運動の破壊を続ける。
* 悪相及び悪業報が出て宗教が定まる…真理は極大にも通用する *
それ等の影響が当然日本にも飛火してくるわけでしょう。先づ経済的に、次に軍事的にね。そうなると日本の社会情勢が農村の隅々までも影響するわけでしょう。それにともなって国内の思想が二つに対立し、色々な面が乱れてくる。所謂悪相が出て来る。それは全て悪業の報いなのだ。個人的にも、社会的にも、国家、世界的にも。
皆さんの御経巻に「悪相及び悪業報」とあるでしょう。これが出て初めて今の宗教が定まるのです。こんどの会報に戸村さんの体験を載せるようだが、わしもその事を聞いている。ほんとうにひどい家庭だったね。その家庭が和合してしまうという事は全く容易な事ではない。真理というものはね、極小にも極大にも通用するものだ、だから真理なのだね。今世界の情勢について一言云ったが、このどうにもならない世界を動かすものは、一人一人の人間にかかっていることを心に刻(きざ)んておかなければならない。
そして一人の方(かた)の一人の礼讃者の後(うしろ)には、何億何千億と云う御先祖が、御因縁がおいでになることを。
さあ、いよいよ重大な話しに移りますよ。末法の癩人と云っても皆さんは、ぴんとこないだろう。だからその前にそれを体験した、身読したＳのことについて話を進めて行きましょう。
この新聞は、Ｓが自分でブロック屋をやりながら、自分で原稿を書いて、自分で経費を一人で出して印刷して発行しているものだ。彼の家は代々から気狂いの系統なのだ。いいかね。自分の先祖そして田舎の親類はね、もう悉く気狂いの系統なのね。女房も気狂いになったでしょう。あの若さで御飯を手づかみで食べ、顔中つけてえへらえへら笑ったり歌ったりしたもんだが、オバーチャンが二日ばかり行って直して来たんだがね。
今娘が十九か二十才で、その弟が今年高校を卒業するんだがね。このＳという父親の胸の中を。その気狂の因縁が先祖の中にも親類の中にも沢山出ている。自分の女房までも気が狂った位なんだから、自分も何時気が狂うかわからない衝撃に何回も会っている。そして父親として、因果応報を知っている父親として、その親の気持に一辺なって見よ。Ｓは何んな想(おもい)をして毎日を生きているかを。何時可愛い我が子が娘が、気狂いになるかわからないと思う父親のＳの想いを。そこからこの新聞が生まれてくるのだ。
* 世界を動かすものは、一人一人の人間 *
私は自分の教えた者がね、教え子とまで行かないが、まあ教え子だ。Ｓが此処迄想いが入ってくれたと思うと、俺は何千億萬円費しても少しも惜しくはないんだ。身は軽く法は重いから南無先祖
養道は顕われます、と簡単に書いてあったが、このわたくしはチャンと覚えている。何処を掴んで、何処を押さえたからこの言葉が出て来ると云うことがチャンとわかっているから。あのね、昭和四十二年を回顧す。というところがあるだろう。私の写真が出ているところだ。そこの処を読んでくれ。昭和四十二年を回顧す
昭和四十二年八月四日○○会
結成一周年記念行事を行う。
* 師匠の体験を聞き、経文を内読…逆の現象にも歓喜奉行 *
どこを掴んでどこを押さえたか 苦しんで初めてありがたみがわかる
Ｓ・Ｊは兄弟一番の親不孝者であります。否日本一の親不孝者であるかもわかりません。一日二十四時間働いても年中貧乏しております。
この不知恩のＪが父子会を結成しました時一人の信者もありません。
妻の貯金を払下げて結成資金とし、又四萬円足らずの給料から毎月「従地界報」を発行し、四日間の休業と活字代其の他一万四、五千円かかりました。
然るに唯一人信ずる者はおりません。一年をすぎた今日心身共に疲れて仕舞いました。プロック業の傍らこうして大荘厳懴悔をさせて頂き、
父 母 孝 養 に精進して参りましたが何の験(しる)しもありません。
若し法華経を読まず、或は日蓮聖人の御遺文を読まず、或は師匠の体験を聞いていなかったら、私はこの苦しさに耐えられなかったでしょう。
信仰すればする程、逆の現象が起こるのに参りましたが、経文を内読して、これを見ると、否それは、理の通りの現象でありましたので、益々喜びあふれて歓喜奉行しました。
多くの人々、特に世に智識階級と云われる人が、真の信仰から退転して行くのは、法華経を身読しないからであります。増上慢なる故であります。
私は、日本に起きる飛行機事故、水害に依る死者のある時、交通事故等が起きる時には、この肉体に感応します。これは私の因縁の者が死んで行くので、これは私に便りするのだ。これは我が身の上だとその都度私は責任を感じます。私は南無先祖
養道様を信行する故に救われております。「法華経の要結、大乗方等経典の懴悔の故であります。」故に私の現状を動かさんとする者は必ず病気になるか、或は死を致す者があり、種々の現象が起こります。
* 老先生は人を皆仏と見る *
常不軽無学大士様も、常不軽国明先生におかれても、こういう現象が起こるのです。
「大乗方等経典」を行ずる者は真に仏子であるからであります。この一介の労働者、Ｓ・Ｊをこのように御指導下さいました、常不軽国明先生が、この父子会一周年記念行事に対して、実に厳粛な態度で御参席賜わりました時は、私は涙が止まりませんでした。老先生は人を皆仏と見るからであります。
仕事では多少の技術は人に買われて参りましたが、人間としては誰にも相手にはされませんでした。親にも捨てられ、妻にも捨てられ、兄弟にも捨てられ全く畜生同然の一介のプロック工に、五眼を具足された恩師先生のみ温かい手を差しのべられた。
* 指をパチンとはじく間に生死の罪を除却…三世の諸仏が守護 *
この有難い信仰に入信すれば、
「三世の諸仏が御守護」して下さいますし、
「一弾指の頃(あいだ)に百万億阿僧祇劫の生死の罪を除却」して下さるのです。
親鸞(しんらん)が「善人尚もて往生す。況や悪人をや」と言う意味を表現しておりますが、全くその通りで、今日の人々をこの仏眼で見れば酒にでも酔っているような姿です。
南無先祖
養道様は、今迄の宗教よりもっと大きな御利益があり、又賢明であります。わずか十人足らずの聴者に対しても、先生は真剣になって人間の真の教行をお話しされるのてす。
「末法の癩人」と生まれなければ、このようなお話に耳を傾ける人はいないでしょう。哀れなるかな今日の人々。
『末法の癩人にあらずんば唱え難き題目…南無先祖
養道』父子会新聞も年一度になりましたが、仏界からの便りは一段ときびしいものがあります。
今年は天魔、地魔のあばれる年だと言われております。必らずこの予言は当たります。法華経上の、霊感者の申す事は百発百中であります。
人間は誰しもだまされまいとして気を配りますが、そういう人に限ってだまされるのが多いようです。それは仏法を知らないから、世間法がわからないのです。
今年は大いに学び大いに導き、大いに信心致して本当の人間の幸福を築きましょう。
悪魔とは人間を地獄に落とし、仏は人間を幸福にするものです。
* 「参った」から新しい人生が始まる *
ここでＳが参りましたがと言っているが、これは、参ったと云うことなのですよ。その参ったと云う事は、先祖代々から自分に至って、悩乱の悪業が脈々と生きているから、もうどうしようもないと往生しちゃったんだね。ここまでこないと身で読みとれるものじゃない。この境界から新しい人生が始まり、立派な生活をする資格者となるのだね。それを大荘厳懴悔と云い、成仏の境界とも言うのですよ。
【注 釈】
☆五眼(ごげん)とは、次の五つを言います。
1、肉眼（にくげん）…人間の肉体にそなわり、可視的なものだけを見ることができる凡夫の目。
2、天眼（てんげん）…遠近、昼夜など、一切の事象を見ることができる目。一切の諸色や衆生の生死などを見通す目。
3、慧眼（えげん）…さとい眼力。鋭い活眼力。物事の本質を鋭く見抜く洞察力。
4、法眼（ほうげん）…仏法の正理を見る智慧の目。菩薩はこれによって、一切の事物を観察して衆生を救う。
5、仏眼（ぶつげん）…仏の眼。悟りを開いた者に備わる、すべての実相を見通す眼。
* たとえ癩病患者になっても、本当の功德の出る末法に生まれたい…大御宝號にめぐりあいたい *
「末法の癩人にあらずんば唱え難き題目、南無先祖
養道」。この癩人とは、癩病患者のことを言っているのではないんですよ。「末法の癩人」とは仏法上重大な事ですから、私の体験と、法華経の明らかな鏡に照らしながら、その要点を話して行きましょう。
皆さんの中で、癩病患者を見たことのある人は手を上げて下さい。はあ、あまりありませんね。病気の中ではね、癩病ほど苦しい、いやらしい、そして人に嫌われるものはないのよ。体の部分が処かまわずくずれ落ちるんだからね。こういう人は若い時は色が白く、奇麗なんだね、そうして二十過ぎると皆くずれてくる。(末法の癩人とは、天台大師のお言葉です。)
* 自分の因縁が誤診させる *
私はこの恐ろしい癩病になると、若い時に医者が誤診したんだね。医者が誤診したんじゃないんだよ。私の因縁が医者を誤診せしめるんだよ。あなた達もそうだよ。自分の子供の病気でも、いとしい女房や夫の病気でも、親の病気でもですよ、医者が誤診するのじゃなくて、その因縁が誤診させるんだよ。それを医者が誤診したんだと世間を恨むが、それはあべこべなんだね。
私の誤診の因縁はどういうものかと言うと、先祖ぎょう養に入って初めてわかったんだけれども、私は前世に行者みたいな事をやっていてね。癩病患者を沢山集めて、物や金を上げさせて、直せっこないものを直してやるとだましたんだね。癩病は天刑病と言ってね、天が刑罰を与える病気だと言われている。その前世の一生のうち、私も死ねば、癩病息者も死んじゃって、今世に私は人間に生まれて来たんだね。ところが癩病患者達は流石(さすが)に天刑病で、癌なんてものじゃなく、勿論肺病なんてものじゃない。肺病はチョイと粋な処があるがね。それが肉のくずれ落ちる癩病患者を、常不軽老師はなめてやっていらっしゃったんだよ。
癩病になる位だから業が深いでしょう。だから人間にまた生まれてこられないんだね。まだあの世で苦しんでいるわけ。しかし、前世に私にだまされたんだから、その恨みが残っているから、あの世でその仇を取るため種々といやがらせをするんでしょう。
そのため私は、癩病になるなるなると思い込んでしまったんだよ。三井物産を辞めたのもこれが一つの原因だったのよ。当時は医者の診断は絶対なものだったし、私もその頃は信仰を持っていなかったから、その苦しみというものは言葉で言い切れないものがあるんだ。Ｓのようなものだよ。
その内、ばあちゃんと結婚する事になったが、私が癩病で御座いますなんて言われないでしょう。子供が生まれたでしょう。国雄と実がね。この我が可愛い子も癩病になるなると思い込んでしまうから、益々気が狂いそうになるんだよ。
* 浄妙のご宝号を頂くと味方になる…因縁とは生霊と死霊の働き *
この我が可愛い子も癩病になるなると思い込んでしまうから、益々気が狂いそうになるんだよ。癩病は遺伝するからね。だからＳの想いと言うものがよくわかるのだ。
この世の中の動きというものは、生霊と死霊とでできているんだね。それを因縁と言うんだ。良い生霊、悪い生霊、良い死霊、悪い死霊が浄妙の御法号を頂くと、それ等の諸の生霊、死霊がみんな仇をしなくなるだけではなく、みんな自分の味方になってしまうんだよ。借金が無くなってしまうのではなく、借金がそのまま財産になってしまうんだ。
それは先祖
養道だからね。だからみんなは御法号をつけて送ってね、一時自分に連なる生霊、死霊を掃除しておいて、導きの功德を積まなければ成仏して、自分の味方になってくれないんだ。だから無量義経十功德品なの。つまり「広く人の為に説く」という事がなければ、絶対因縁がとれないから、何事をやっても駄目なんですよ。* 善業の尊さ、悪業の恐ろしさ *
こういう事が本当でなかったなら、お釈迦様も、日蓮様も、キリスト様もみんなインチキ師なのだ。ところが、インチキ師じゃないんだ。人間の方がみんな無智なのだから、それは私がさっき話した癩病でないのに癩病だと信じ込む。丁度この部分にナマズができたんだね。そのナマズのできた処に引きかけ、医者を使って癩病になると診断させる。そんなものだよ。因縁は本当にあるんだよ。本当にその恐ろしさを知らなければ駄目なんだ。善業の尊さ。悪業のおそろしさ。それ等が人間の世々生々につき回るんだからね。
「末法の癩人にあらずんば唱え難き…南無先祖
養道…南無先祖養道様はもっともっと御利益があり、「賢明」であり、末法の癩人に生まれなければ、このようなお話に耳を傾ける人はないでしょう。哀れなる哉今日の人々。」今まで話して来たのは、本題の「末法の癩人」をわかってもらうための予備なのです。そうでなければ、これからの意味が通じないと思う。ではいよいよ本題の『末法の癩人』。
それは、末法の人々を救うための題目、全ての人間が神・仏に優先する題目にめぐリ会った我々であるということであって、それは更に、教主釈尊の本願であります。併して先師先德、諸大菩薩様方が末法をいかに渇仰されたいわれについて話を続けましょう。
* 末法の癩人は天台大師の願い…末法の大白法にめぐりあいたい *
１、大白法は末法に顕れる
この末法の癩人とは、初め、支那の天台大師という方が言われたのです。釈尊の法華経を、天台(注イ)、伝教(注ロ)、日蓮(注ハ)と相うけて、これを日蓮聖人が三国四師(注ニ)と言われておるんだ。
（1）明理明鏡に照らし
そこで、法華経とは一口にどういうものかというと、「法華経の明理明鏡に照らせば」と言われている如く、この法華経を心ある人が見れば因縁の次第が皆、法華経の鏡に照らし出されて、その実相がすぐにわかる。だからこの法華経を「蓮華面経」とも言う。
たとえば、説教するとか、お話するとか言うけれど、真実はそうではない。春が来れば花咲き、秋になれば木の実が成り、黒い豆は精力に良いとか、黄色の大豆は腎臓、肝臓等に良いとか、皆、自然(仏)が説明をしている。顕れているものに対して全部、仏様の体験が説法としてそれを説明している。
* 法華経の奥に現代を救う大白法がある *
人間の過去の業、あるいは人類の業が法華経の中に写って出ているものなのです。この写っている個人の姿を見ても、社会の姿を見ても、国の姿を見ても法華経に説いてある通りなのだから、その蓮華面経の奥に、今の時代に応じた正法実義の救いの道である大白法がなければならない。(｢白｣とは正を意味し｢黒｣とは邪を意味する)。大正義が出なくちゃならん。まあ少し勉強するんですね。
【注 釈】
（イ）、天台…隋の智者大師を天台大師という。名は智
、天台宗の開祖。天台三大部（法華文句、法華玄義、摩訶止観）があり、理の一念三千を説く。中国の天台第3祖、実質的には開祖。慧思(えし)に師事し、のち天台山にこもって法華経の精神と竜樹の教学とを独自に体系づけ、隋の皇帝の帰依を得た。「法華文句」「法華玄義」「摩訶止観」の法華三大部など著作多数。天台大師。智者大師。（538～597）(広辞苑第六版より引用)
（ロ）、伝教…最澄のこと。平安時代の日本天台宗の開祖。根本大師ともいう。『道心の中に衣食あり、衣食の中に道心なし』は最澄の言。
（ハ）、日蓮…法華経のうちの妙法蓮華経を受け持つ御使命の方。妙法蓮華経従地涌出品中の四首唱導の師の一人、上行菩薩の御再誕。題目身唱をとなえ、事の一念三千を説く。立正大師とも言います。
（ニ）、三国四師…インドの釈尊、中国の天台大師、日本の伝教、日蓮を言う。我が教団では四国六師と言います。
即ち、三国に韓国を加えて四国（伝教大師の因縁と史実に依る）とし、四師に末法本時の大導師、無学大士、並びに常不軽台学大師を加えて六師と為します。
【仏紀三千年】
（四国）（六師） ┌────┐正しい教 ∥ ∥ │正法千年│えと功德 …インド…釈尊 └────┘が残って ↓ いる。 ↓ ↓ ┌────┐仏の精神 …中国 …天台 │像法千年│がなくな ↓ ↓ └────┘って形だ …(韓国)…伝教 ↓ けになる。 ↓ ↓ ┌────┐白法隠没 …日蓮（上行） │末 法 │して大白 …日本 ↓ └────┘法顕れる。…常不軽(無辺行) ↓ ↓ ┌───┐ …台学国明大士(浄行) │21世紀│ ↓ └───┘ …末法本時の人類(安立行)☆ ほろほろと啼く 山鳥の声きけば 父かとぞ思う 母かとぞ思う（行基菩薩）
* 我にあらずんば知らず、汝にあらずんば悟らず…慧思、天台両大師の因縁 *
日蓮聖人は、天台大師を智者大師と呼ばれ、「その智の賢きことは、日蓮の及ばざるところ」とまで称讚されている。今日もなお、世界の人々が、先ず智者としては、天台大師の右に出る人がないとまで敬服されている。
伝教大師を根本大師とも言う。それは日本の仏教の根本を開いた方なのだからこういうことから日蓮聖人は非常に尊敬して、その方々が書き遺されたものを御自分の教学とされたのです。
（2）すべてを捨てて
天台大師は、はじめ南京におられ、数万人の信者がいて、時の皇帝の帰依まで受けていたんだが、御自分の信仰の足らなさが解って来て、もっと深い本当の法を求めるために、それ等の名利名聞を振り捨て、弟子を一人連れ、天台山におられる慧思大師を尋ねられたんだ。
天台大師は52才で亡くなられたほどだから、非常に体が弱かったんだね。その弱い体で南京から満州の国境に近い天台山まで歩いて行かれた。丁度、鹿児島から北海道ぐらいの道程があるところを、それも、野に臥し山に寝、木の実草の実を喰べながらだよ。本当に命がけで天台山に登られた。
慧思大師にお目にかかった時、師匠である慧思大師は非常に喜ばれた。そのお言葉が後世に残っているんだよ。「今日ここで会うのは、過去の世に霊鷲山の釈尊の御前で、共に修行し学んだその因縁がここに結ばれた」という意味をこう言っておる。「これは我にあらずんば知らず、汝にあらずんば悟らず」と。
それほどの御身分のあった天台大師が、命がけで天台山に慧思大師を訪ねられた訳は、法華経を学ぶためだったのだね。ちょうど、千四百年前だから、像法時代の前期の末に当たるわけです。
* 賢人は五百年、聖人は千年に一度 *
伝教大師は今から約千二百年前に生まれたんだね。この方は像法の終わりに当たる。
日蓮様は、仏紀二千二百年の時代、今から約七百四十年前に生まれたんだから、末法の始めに当たるのだ。昔から賢人は五百年に一度、聖人は千年に一度出ると言われているが本当だね。
（3）四首唱導の師
法華経上、末法にこの法華経を説くお役の方が生まれなければならないことになっている。もし、お出ましになっていなかったら、釈尊の教えも、その肝心な法華経も皆、嘘という事になるんだがね。
ところがその通り、お出ましになっておられる。まず上行様(注ホ)、このお役の方が日蓮様ですね。次に無辺行様、このお方は常不軽無学大士様(注ヘ)ですね。第三に浄行様(注ト)、この浄行様もお出ましになっていなければならない。
【注 釈】
（ホ）、上行様(四首唱導の師)…妙法蓮華経従地涌出品において、仏の滅後に法を弘める使命の多くの菩薩方の中の四大菩薩（上行、無辺行、浄行、安立行）の一人。日蓮聖人は法華経上、その行跡から御自分が上行菩薩である事を自覚された。
（ヘ）、常不軽無学大士…大荘厳懴悔道～先祖ぎょう養道の始祖。法華経中の無量義経（一部一巻三品）を受け持つ御使命で、御本地は本化地涌の無辺行菩薩であり、大正七年十月三十一日に御入滅された。
先祖ぎょう養道（即ち人間礼拝）は常不軽菩薩の行なので、日蓮聖人の寺泊御書（贖命重寳鈔）の言葉…『其時日蓮は即ち不軽菩薩たるべし』（日蓮の教えに欠けがあるため、末世には再び御出世されるという法華経上の次の御使命について、あらかじめ御遺訓されたもの）に符合します。つまり、常不軽無学大士は日蓮聖人の御再誕ということです。（不軽菩薩とは常不軽菩薩の略称です。）
因みに先祖（一代前は四人の祖親ですが、三十一代前は約四十三億人）は無量無辺なので、無量義経、無辺行菩薩に通じます。
また、無学大士の「無学」とは学がないということではなく、学び終わってもう学ぶものがないという意味です。
（ト）、浄行様…法華経の結経たる仏説観普賢菩薩行法経(一部一巻一品)を受け持つ御使命の方で、南無先祖
養道の始祖であられる我等が大恩師、常不軽台学国明大師こそ、その法華経上の行跡から、御本地は浄行菩薩様であります。浄行の〝浄〟は洗い清めるという意味です。末法には個人、家庭、国家、人類のあらゆる『業』が噴出するので、それを洗い清める方式…懺悔滅罪の大法を台学大師は開顕されました。
又、台学大師は『行の一念三千』を説かれ、誦持宝號によって生活行としての仏法を確立（だれでも救われる道が開かれたということ）されたのです。
ちなみに四首唱導の師の最後の安立行菩薩とは、未来に、南無先祖
養道（仏説による父母孝養・師長恭敬）を実践して、安心立命の浄妙国土を建設していく方々を言います。* 浄行様は末法に法華経を説くお役の方…恩師こそその浄行如来 *
何故かと言うと、世の中に末法の癩人が充満する時にお出ましになるお方だからね。今の世の中はどう、今年からはますます世の中が激しくなったでしょう。
貴方がたは毎日の新聞やテレビを注意して見守らないからわからんだろうが、今、日本人として安楽に生きてはいるんだが、本当に大変な事なんだよ。いつどうなるかわからない様な状態の中で生きているんだよ。
* 業を洗い清める方式が懴悔滅罪の大法 *
日蓮聖人は自分が上行菩薩様だと知ったのは、佐渡へたく流（島流し）にされてわかったんだね。その間、二十年の歳月があったんだよ。その前は、御自分としては必ず法華経上、上行菩薩がお出ましになると思っていたんだ。当時の国内と国外の情勢から見てもだね。
だから上行様がお出ましになる露払いとして、先駆者として御自分が活動するんだというつもりでやられたが、やってもやっても出て来ない。
その中、御自分のやられた後を振返って見ると、あっ、膿（わし）が上行だという自覚を持たれたんだ。
* 末法の諸現象の根本原因は、過去の自分が作った罪業 *
（4）浄行菩薩の御再誕
私は浄行ではないが、浄行院と名づけ浄妙と名づくる所以は、日蓮様の通り必ずお出ましになるんだから、でなければ法華経は嘘なんだ。
経文の文証(注チ)からも、今日の個人の生活から言っても、社会の情勢・国の状態・世界の動勢から見てもその通り末法の現象だから、必ず浄行が出る。
これら諸情勢の根本原因は、過去の自分が作った罪業だから今の自分に出る。
この罪業がこのように各面から苦しめるから、その罪業を洗い清めるお方が、また、その方式が出て来なくちゃならないはずなのだ。だからきっと出てくると私は信ずる。私は自分じゃないと思っている。けれども、自分でない自分というものがどこかにあるかも知れない。しかしすべて、自分の立場を自分で定めることはできないでしょう。
２、本当の法華経
（1）末法がうらやましい
お釈迦様の滅後千年の間を正法時代と言い、その次の千年の間を像法時代と言う。正法とは釈尊が亡くなられてその直後だから、お釈迦様の教が、その功德が残っていたわけ。
そのうち像法の二千年代に入ると、その正しい教えがだんだん無くなって、人間の方が勝手にその教えを解釈して形だけになってしまう。つまり仏様のお心が無くなって来て、その信仰がお寺を建てたり、仏像を造ったりして、その精神が無くなってしまう。
* 末法にこそ本当の功德が現れる *
仏滅後二千年後は末法と言って、教や形があっても肝心な証(しるし)が無い。信心の証明が現れない。つまり功德が無い。こうなると人間の世界は暗黒で温かみが無くなってしまうから、それを救うべき大白法が末法の時代に出てくる。法華経の中なる法華経(注リ)が出てくる。だから天台大師がおっしゃった末法の癩人とは、正法像法の時代に帝王と生まれてくるよりも、本当の功德の出てくる末法に、たとえ癩病患者に生まれても、その法華経の中なる法華経にめぐり会いたいと、こう言うんだ。わかりますか。
【注 釈】
（チ）、経文の文証…妙法蓮華経従地涌出品第15に「一を上行と名づけ、二を無辺行と名づけ、三を浄行と名づけ、四を安立行と名づく。是の四菩薩其の衆中に於て最も為れ上首唱導の師なり」とあり、妙法蓮華経化城諭品第７には、
「香風時に来って萎める華を吹き去って、更に新しき者を雨らす」とあり、また大集経には今日の時代を、「白法隠没、闘諍堅固」と言い、『大白法流布』の時がこれに代わると予言されています。
これらは即ち、法華経の予言通り、上行、無辺行菩薩が出現されたので、今の時代は浄行菩薩が出現される時ということです。
（リ）、法華経の中なる法華経…法華経の結経たる仏説観普賢菩薩行法経のこと。
「何を以てか衆生をして、無上道に入り、速かに仏身を成就することを得せしめんと」（如来寿量品第16）の答えがこの行法経です。
* 懴悔滅罪の大法にめぐりあう尊さ…無量にわが生命を継いでいくから *
人間として帝王に生まれるという事は最高の功德であり幸福であるのに、それが癩人にだ。人から嫌われる、一番辛い、悲しい、病気持ちに生まれても、この末法の本当の験(しる)しが顕れる法にめぐり会いたい。その方が尊いのだという意味なのです。
* 法華経を信仰する信者の心構え *
何故か、無量百千万億阿僧祇劫（無量に長い間）自分の生命を継いで行くんだから。これが法華経を信仰する信者の心構えなのだ。
天台大師は皇帝の帰依とその待遇も捨て、数万の信者も捨てて法華経を求めたわけが少しは解(わか)るだろう。この功德によって伝教大師を生み、日蓮聖人を作ったことになるんだ。しかし、御自分は像法の初めの時代だから、本当の法華経にはめぐり会えないんだ。だから理の一念三千(注ヌ)しか説けないんだよ。
伝教大師もだね、像法の末に生まれたんだから「末法太だ近し」と言って、末法の初めには南無妙法蓮華経というお題目にめぐり会えるのだから、その末法がうらやましい。自分はそれを説く使命じゃない。その使命の方がうらやましい。末法はなはだ近し」とは伝教大師の切実な心なのです。
（2）妙法蓮華経にも欠け
かくして末法の初め、今から約七百年前に日蓮聖人がお出ましになって、南無妙法蓮華経をお唱えになった。だが御自分がお唱えになったものにまだ欠けがある。だからそれを御遺文(注ル)として重要なところに書き遺(のこ)している。
【注 釈】
（ヌ）、理の一念三千…一念とは、わが心の一瞬の働きの事。三千とは、地獄、餓鬼、畜生、修羅、人間、天人、声聞、縁覚、菩薩、仏の境界を十界とし、この十界が各々十界を具するので百界となし、百界の一々に相、性、體、力、作、因、縁、果、報、本末究竟の十如の義を有するから千如となし、この千如は各、衆生、国土、五陰の三世間の別あるので、三千世間となる。要するに森羅三千、一切がっさいすべてということ。
天台、伝教両大師は理論上これを説き教えたので、これを『理の一念三千』と呼び、日蓮聖人はこの理を真実となして弘められたので、これを『事の一念三千』と言います。
現代の我々は仏説にもとづいて、この『理』と『事』を単なる事理に止めず、全く日常生活の実践行為の上に実現し、以て観念的な仏法を改め、現実的生活的な生きた仏法たらしめていくので、これを『行の一念三千』と言います。
以上を家作りにたとえて言えば、『理』は設計図の段階、『事』は土台を作り、家を建てる段階、そして、『行』はその家に住んで、生活するということになるでしょうか。
（ル）、御遺文…(１)釈迦一代五時継図に天台大師の「法華文句」から引用して、『普賢観は法華を結成す』（仏説観普賢菩薩行法経が法華経の結論に当たる）と述べています。
(２)寺泊御書には、『其時（未来は）日蓮は即ち不軽菩薩たるべし』とあります。
(３)開目鈔には、『一念三千の法門は但法華の本門・寿量品の文の底に沈めたり』とあります。
(４)本尊鈔には、『一念三千を識らざる者には仏、大慈悲を起し、妙法五字の袋の内に此の珠を裏み、末代幼稚の頸に懸さしめたもう』とあり、さらに、
(５)三大秘法鈔には、『本門の本尊、本門の題目はあれども、戒壇は時をまつべきのみ』とあります。以上は南無妙法蓮華経には、濁悪末世の衆生を徹底救済するところの能力が本質的に不足していることを言明しているのです。
* 現代の人が救われるか救われないかの大問題…日蓮仏法は未完成 *
今私が言った事は、最も重要な事なのだ。末法の今の人間が救われるか救われないかの問題なのだから。そこでこれを見つけ出す者はね、何十年の修行と苦労を重ねて初めて見つけ出すのですよ。だから父子会のＳが感激してね、これは有難い、これで南無先祖
養道に踏み切ったと言うんだ。妙法蓮華経だけでも駄目なんだ。だから、日蓮聖人は常不軽となって（注オ）生まれてくると言われたのだね。妙法五字の袋の中に(注ワ)一念三千の宝が包まれているのだから、日蓮聖人にしてみればよほど羨ましいものが残っているから、次の末法の後半に常不軽に生まれてくると言うのでしょう。
してみると、今我々は常不軽にめぐり会っているんだ。これは何を以て立証するか。常不軽品に(注カ)、『我深く汝等を敬う、敢て軽慢せず。所以はいかん、汝等皆菩薩の道を行じて、當に作佛することを得べし』という。我汝等とは誰か人間でしょう。我、仏を敬った、神を敬ったとは書いていないでしょう。
【注 釈】
（オ）、常不軽となって…前述（注ヘ）の常不軽無学大士～本化地涌の無辺行菩薩のこと。
（ワ）、妙法五字の袋の中に…妙法五字（南無妙法蓮華経）は袋であって、その中に包まれている宝(珠)は、まだ開かれていないもの…即ち、我々から見れば、南無先祖
養道です。（カ）、常不軽品に…妙法蓮華経常不軽菩薩品第二十には常不軽菩薩（過去の世の釈尊）は人間礼拝行によって、仏になったことが説かれている。
* 菩薩の道を行じて作佛する *
（3）神を動かす人間の発見
お釈迦様の時代にはお釈迦様以前に宗教があったんだ。お釈迦様は仏教だが、この釈尊の仏教が三千年に至らんとしている今日、なお地球上に広がっている。では、そのお釈迦様の尊さは何処にあるのか。
「真理の花たば法句経」というのがある。そこに、『それはともあれ、神々に対する人間の優位を自覚した、仏陀の偉大なる精神は』とこうある。言い換えれば神様より人間の方が偉いと言う仏陀の精神は、ということになる。ルネッサンスにおける人間の発見に勝るものである。実に偉大な発見だ。其処に仏陀の偉大さがあるわけがある。
* 人間が仏であり、人間が悪魔である…人間に主体性がある *
人間を唯の人間として扱わず、神より優位で神より勝れているということを発見された。それが法華経なのだね。だから人間が人間を礼拝する。即ち人間が仏であり、人間が神であり、人間がそのまま悪魔であるというところから人間の生活の基本ができる。つまり、人間の世界の倫理が出てくる。世界全体の共通なる倫理だね。今のような地域的な倫理、国とか土地によって異なる倫理ではない。
たとえば、ある時は一夫一婦、ある時は一夫多妻、また地域等によって夫婦の倫理が異なるというようなものではない。世界共通の倫理は、実は先祖
養道なんです。それそのまま仏、神なの。それそのまま宇宙倫理なのだ。それは人間が神仏よりも優位を示しているという人間の発見に、釈尊の偉大さがある。しかし、神様より偉いと言うのではない。この自然界における人間という立場こそ、神よりも勝れた地位にいるんだ。つまり、『神を動かす者は人間である』(注ヨ)ということなのです。
３、人間世界の夜明け
（1）人間が人間を礼拝
今迄の宗教は、神によって人間が動かされている。創価学会も、阿弥陀経も、キリスト教も全てそうでしょう。これ等の宗教は今日は皆、邪道(注タ)なんだ。だから自然に反対へ反対へと逆行するんだね。幸福ではなく不幸へと、平和ではなく闘争へと。
* 常不軽菩薩にめぐりあっている *
南無先祖
養道は人間でしょう。先祖とは先ず人間、人間が人間を礼拝する。それが常不軽の行(注レ)でしょう。「我汝を軽しめず」だもの、わかりますね。その本尊に、その教えにめぐり会ったことが常不軽菩薩にめぐり会った証拠なのです。解りますか、これが真の宗教。あなた方は魂が盲目だから、この話をしても感激が出て来ない。身震いが出ない。
この御本尊によって、この教えによってこの導きの道によって人間が、世界の人類が本当の幸せを造って行くのだ。だから、身震いする程感激するものだ。このために今迄三千年の歳月がかかったんだね。
【注 釈】
（ヨ）、神を動かす者は人間である…神を動かすも悪魔を動かすも人間の自由にまかされている。これは神仏を拝めば救われるということではなく、個人の行為の善悪がその人の幸、不幸を作るということ、つまり、人間自身に責任があるということです。『天上天下唯我独尊』です。（各自、我なるものがもっとも尊い。）
（タ）、邪道…人間の主体性を無視し、それを忘れさせる信仰、時を過ぎたもの、己れの責任を忘れさせる宗教、特殊な能力の持主しか出来ない信仰等、人間の真実のあり方から目をそらさせるものは己れを滅ぼします。
（レ）、常不軽の行…現代は大御宝號（南無先祖
養道）を誦持し、先祖の法名をことごとく取り集め、朝夕礼拝することから始まります。我が教団の標語、『仏説による父母孝養・師長恭敬』は常不軽の行を言い表わしたものです。
* 人間世界の夜明けが始まる…人間が人間を尊重する *
神仏を主体とした罪業、人間を無視（疎外）した罪業が今日、清算される時なのです。その罪業が戦争と社会面の人殺しとなり、地震となり、火事となるんだね。その一面においては、この大白法によって人間が人間を尊重する、人間世界の夜明けが今始まりつつあるんだ。これを末法本時、末法の癩人と言うんです。
（2）あなた自身の功德
貴方々はまだ本当に、その尊さ有難さを知らないんだ。ただ過去の業によって目先だけの欲しか追っていないんだね。そうであるけれども、今此処にめぐり会ったという事は、誰の功德でも力でもない。貴方々自身の過去の功德によって、めぐり会っているんだな。行法経にあるでしょう。『自ら故の身を見ること了々分明ならん』(注ソ)と。
だから摂折して導けばその功德によって、ちゃんとわかってくる。その時に無量義経の如く諸仏諸天が、天華天妙楽(注ツ)を雨(ふ)らしてくるんだよ。だから絶対に無量義経の通り、広く人の為に説く (注ネ)ことをしなければいけない。
末法のライ人として生まれてくるべき私は、今この通り癩病患者ではない。それにこの大白法にめぐり会っていて、たとえわずかな弟子でもできている。また例えば、足りないながらも、終生それに命を賭けようとしているんだ。これ程の喜びが何処にあろうか。帝王に生まれた喜びよりも尊いんだ。
* 真の実義にめぐりあう尊さ *
あなた方もそうなのです。もし南無先祖
養道様が、この大御本尊様が本当に末法の真実義、正法実義であったなら、たとえ癩病に生まれ来ても、この大法にめぐり会いたいと思わないか。それをただの人間が言ったのではなく、大智者が言われたんだ。天台大師も伝教大師も日蓮(立正)大師も。それほどに法華経の真の実義、正法の大荘厳懴悔(注ナ)にめぐり会うという事は尊いものなのです。だからこの尊い大法に縁を持たせ、導き入れるということはどれ程の功德なのか、億々万劫の悪業の一切が霜露の如く(注ラ)消えて行くのです。
【注 釈】
（ソ）、自ら故の身を見ること了々分明ならん…三部経（法華経全巻）の行法経405ページに、「自ら過去無数百千の仏の所にして大乗経典を受持し読誦せしことを憶し、自ら故（もと）の身を見ること了々分明ならん」とあります。
（ツ）、天華天妙楽…大乗方等経典（要結）の無量義経Ｐ59に、「世尊の慈恩實に報ずべきこと難し。此語を作し已りし、爾の時に三千大千世界六種に震動し、……の寶（たから）を雨（ふ）らして……」とあります。
（ネ）、広く人の為に説く…要結品の無量義経Ｐ51に「善男子、第八に是の経の不可思議の功德力とは、……廣く人の為に説かん……」とあります。
（ナ）、大荘厳懴悔…南無先祖
養道～仏説による父母孝養・師長恭敬のこと。要結品の行法経Ｐ24に「是の如き相をば大懴悔と名づけ、大荘厳懴悔と名づけ、……普賢菩薩及び十方の仏を見たてまつることを得ん。……」とあります。（ラ）、霜露の如く…要結品の行法経Ｐ30に「衆罪は霜露の如し」とあります。また、要結品の無量義経Ｐ54に「広く衆人の為に是の経の義を分別し解説せん者は、即ち宿業の餘罪重障、一時に滅尽することを得」とあります。
* 大法に縁を持たせ導く功德…一切の罪業が消えていく *
（3）摂折…自分を飾るさんげ
私みたいに老後にこの通り幸せになるんじゃないか。苦しんでいるはずの者が寿命の増益(注ム)を得て、ちょうど常不軽品にあるとおりだね。歌の文句にも「幸せ一杯、胸一杯」とかあるんじゃないか、末法の癩人がこうなるんだ。
あなた達は、その自分の尊さに感激して、生活と命を賭けた信心をしようとしないで、自分の心の趣くままの信心をして行こうとすることは以ての外なのだ。大罰当りなんだ。
先師先德がライ病になってまでもめぐり会いたいという大法を、私欲のために曲げられますか。だから本当の信心をして、本当の功德を顕さなければいけないでしょう。
私は日々、毎日泣きたい思いだ。日蓮様がよくこうおっしゃった。「鳥の泣かない日はあるが、この日蓮が泣かない日はない」(注ウ)とね。私はいつになったら日蓮様の思いになれるんだろうと思ったほどなのだ。
私のような者がそうなのだから、御本尊、御本仏様はなお一層の想いでありましょう。「我は是れ世の父」(注ノ)とおっしゃっているでしょう。
* 生活と命を懸けた信心を！ *
本当に大御父は、毎日毎日苦しい想いで過ごしていらっしゃるわけだね。それを少しずつでも分担させていただくの。それには摂折して、導いて、この大法にもとづかすの、それが分担するという事なのです。自分にとっては懺悔なの。しかも大荘厳懴悔なの。必ず心を飾り、身を飾り、家も飾り、親を飾り、子孫を飾るものなの。
どうか皆さん、自分にいつわりのない立派な信心を進めていただきたい。（昭和四十三年三月）
【注 釈】
（ム）、寿命の増益…常不軽菩薩品第二十（三部経321ページ）に「……是の六根清浄を得已って、更に寿命を増すこと二百萬億那由他歳、……」とあります。
（ウ）、鳥の鳴かない日はあるが…諸法実相鈔には「鳥と虫とはなけども涙いでず、日蓮は泣かねども涙ひまなし。」とあります。
（ノ）、我は是れ世の父…妙法蓮華経如来寿量品第十六には「我も亦為れ世の父、諸の苦患を救う者なり」とありますが、この「も」を「は」として、「我は亦為れ世の父、…」と読むべきだ、というのが恩師（常不軽台学先生）の御説です。そのわけを私（倉田 修一）は直接伺ってはおりませんが、私は次のように解釈しています。
即ち、「我も亦為れ世の父、」と読めば文字通りの意味ですが、「我は亦為れ世の父、…」と読むと、「は」の一字に、懴悔の意味が込められていると私は考えています。
筆録後記（菅原 実 事務局長…当時）
主管先生は常に、一人のためにも、百千萬人のためにも等しく法を説かれます。前号において青年部が、大乗方等経典の御解説をお願い申し上げました。この大乗方等経典は、釈尊が教菩薩法の妙法蓮華経を説き終わり、自ら出世の本懐を説き示すべく、三大士の驚愕の請願を待って、ここに末法本時の要結大乗方等経典が説き出されて来るのであります。要結品の冒頭は当にこの説相を物語っております。故に、大乗方等経典は、来法の癩人に相応する今日の我々のために説きおかれているのであります。
この主管先生の御講話は、大乗方等経典身読の御解説の大要であります。しかして、主管先生の御説法は、我等の信仰とその実践に伴って、甚深甚深なる御説法となりますから、我等同信は大いに摂折して信解の益を得なければなりません。
この筆録は、二月一日、九十九里本営月例法座におきましての御講話であります。 （おわり）
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